
前編では、「商品が売れる」ために欠かせない二つの条件──
①ストーリー(必要性)②権威性(信頼)を、「自分という商品」の売り込みにどう応用するのかをお伝えしました。
後編では、残りの二つの要素、③売れる伝え方④クロージングについてお話しします。
自分自身のストーリーや権威性を洗い出した後に大切になるのは、それをどのように相手に届けるかという点です。思いつくままに話してしまうと、せっかく整理した内容も相手には伝わりません。
実は、私がテレビショッピングの現場で「3時間半で1億5千万円」「1分72万円」という数字を叩き出したときも、最後に決め手となったのは、この“伝え方”と“クロージング”の力でした。そして面白いことに、転職活動の自己PRや面接でも、まったく同じ法則が働いています。
企業は人を採用するとき、「誰でもいいから来てほしい」と思っているわけではありません。
多くの企業が今、こんな悩みを抱えています。どれも致命的な問題ではありませんが、日々の積み重ねで、じわじわ効いてくる困りごとです。
・目の前の業務で手一杯で、手順を見直すところまで手が回らない。
・数字を追うことで精一杯で、新しい提案や工夫まで考えられない。
・お客様対応に追われ、次につながるアイディアを形にできていない。
・売上を伸ばしたい気持ちはあるけれど、何から手を付けていいかわからない。
これらはすべて、誰かが少し手を貸してくれたら、前に進みそうな悩みです。
これは、テレビショッピングで言えば、視聴者が抱えている“お困りごと”とまったく同じ構造です。テレビショッピングの世界では、ここが「ニーズ」にあたります。
もちろん、このニーズは事前の企業リサーチによって把握する必要があります。
そして重要なのは、その悩みを解決してくれそうな人こそが、企業にとって「欲しい人材」だということです。
だからこそ、自己PRは相手(採用側)の悩みから逆算して組み立てることで、伝わり方が劇的に変わります。その際に使えるのが、著書『売り方の教科書』で紹介している「売れる話し方の型」です。
悩み → 解決策 → ストーリー → 未来 この流れを、自己紹介に当てはめていきます。
テレビショッピングでは、最初に必ずこう問いかけます。
「こんなお悩み、ありませんか?」
面接の場で、これを口に出す必要はありません。皆さんの頭の中で問いかければ十分です。
「この会社には、今こんな課題があるはずだ」
「だから、こういう人材を求めているのではないか」
この背景を理解したうえで、自己紹介は“解決策”から始めます。相手の悩みが見えれば、あなたが提供できる解決策も自然と浮かび上がります。ここが、前編で洗い出した皆さんの強みです。
・たとえば、早期にキャッチアップできる対応力。
・仕組み化や改善をコツコツ進められる力。
・関係者と調整しながら物事を進める力。
・地道に積み上げていく継続力。
これは単なる自己アピールではありません。相手の悩みを満たすための「価値提案」です。
テレビショッピングで「この商品は、あなたの“ここ”をラクにします」と伝えるのと、まったく同じ構造です。
解決策を提示したら、次に必要なのが根拠です。ここが、皆さんのストーリーにあたる部分です。
・クレーム率を3ヶ月で40%改善した経験。
・在庫管理の仕組みを整え、作業時間を3分の1に短縮した経験。
・部署間連携を見直し、トラブル件数を半減させた経験。
・契約更新率を20%向上させた経験。
テレビショッピングの現場でも、数字や具体例を入れた瞬間に電話が鳴り始めます。転職活動でも同じで、エピソードが入った瞬間、相手は「この人は本当にできる人だ」と腑に落ちます。
次に大切なのが、あなたを採用するとどんな未来が手に入るのかを、提示することです。
・業務が進めやすくなる工夫を考えていきたい。
・任せていただいた業務の中で、着実にお役に立てるよう取り組みたい。
・日々の業務を通じて、少しずつ成果につなげていきたい。
テレビショッピングでは、視聴者が「商品を手にした後の自分」を想像した瞬間に、行動が生まれます。採用の現場も同じです。未来を見せられる人は、選ばれる人です。
商品がどれだけ良くても、テレビショッピングでは最後の一言で売上が大きく変わります。
面接も同じで、最後の言葉が相手の背中を押します。
「御社で長く貢献したいという想いは誰にも負けません」
「これまで積み上げてきた経験をすべて活かし、御社で力を尽くしたいと考えています」
「ぜひ御社の一員として働かせてください」
温度のあるクロージングは、採用担当者にとっての“決め手”になります。
「ストーリー」「権威性」「伝え方」「クロージング」
この四つの条件がそろったとき、皆さんは一気に“選ばれる側”に変わります。
「うまく強みを伝えられない」
「職歴が多い」
「アピールが苦手」
そんな方でも、この四つを一つずつ整えていくことで、キャリアは“魅力的なストーリー”になります。
そして面接の最後に、企業側からこう言われる日が来るでしょう。
「ぜひウチの会社へ!」
小田急プラネット 教育研修事業 提携講師 宮坂 珠理氏
※元QVCジャパンプロデューサー&元東北放送アナウンサー